もうすぐ。





コタツに手を突っ込んで、背中を丸めてなんとなく国民的音楽番組を見ている。狭いキッ
チンでは芙美が年越しそばを作っていた。

「寒いなら、何か着たら?」

長袖のラグランシャツ一枚だけでこたつに入っている石川にかかる声はやさしい。

「んー」

言いながら、そのまま横に倒れた。ぐでっとだらしなく寝転がった石川の上にニットの
コートが降ってくる。飴色のそれは芙美が着てきたものだ。見上げると、珍しくカジュ
アルな服装をした芙美の眉がきゅっと寄っていた。そんな格好もかわいいのにね、と言お
うとしたら芙美が先に口を開いた。

「風邪ひくよ」
「うん、」

ゆっくりと起きあがってニットを羽織って、石川は小さく笑う。

「ちっさい」

芙美が少し口をとがらせた。

「だってあたしのよ」
「そっか」
「もう少しで出来るからね、待ってて」
「うん」

コタツの前でまるまる。
板の上に頬を乗せた。

もうすぐ、明日がくる。
もうすぐ、新しい年がくる。


明日は、どうしたらいいのだろう。
ぼんやりと見えてきた道は、まだとても細くて石川を不安にさせる。


「はい、お待たせ!」

ぺたんとコタツの上に寝ている石川を見て、芙美が気遣わしそうな顔をする。

「何、考えているの?」

不安そうな顔をした芙美に向かって、ふにゃりと笑いかけた。

「明日の事、」

芙美の顔がぱっと輝く。

「明日は初詣に行って、それから初売り行くって約束したじゃない」
「初売りかぁ。疲れそうやなぁ」
「そんなおじいさんみたいな事言わないで、」

芙美は笑いながら石川の前にそばを置く。
ほかほかとあがる湯気の向こうに見た時計は、もうすぐ24時を告げる。





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© あさき
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何かありましたら












































































































































































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